名文

 

「大抵の人は、事実大多数の人は、境遇のために余儀なくされた人生を送る。自分が四角い穴の仕込まれた丸い釘だと思って、不満を抱き、事情が違っていたら、もっと成功できたものをと考える人も居ないではないが、大多数は自分の運命を、明るくとまではいかないが、まあ仕方ないと受け入れている。こういう人は、いつまでもいつまでも同じ線路を往復する路面電車に似ている。往っては帰り、帰っては往くを繰り返すしかなく、その挙句、動かなくなれば、屑鉄として売られるだけである。それとは逆に、自分の人生行路を大胆にも自分の手で定めた人は滅多にいない。もしそのような人が見つかれば、よく観察してみるだけの価値がある。」 モームロータス・イーター』